コアラが抱けなくなる!?
 
 先日のテレビのニュースで、オーストラリアで、
コアラを観光客が抱くのを禁止する法案を出そうという動きがあると伝えていました。そういえば、シドニーの郊外の動物パークでは、直接コアラは抱かしてはもらえませんでした。理由を聞くと、以前にこの街である観光客が、抱いたコアラの爪の痛さに取り落とし、けがをさせてしまったとのことでした。その結果、市内ではコアラのぬいぐるみを観光客が持ち、そのうえにコアラをしがみつかせるということになったようです。しかし、同時期にブリスベーンへ行った中学生に聞くと、そこでは直に抱けたそうですし、2年前に私がブリスベーンで抱いたときも同様でした。市によって異なるところが、おもしろいところです。 
 
 さて、ニュースの件ですが、毎日何百人の客に抱かれるため、ストレスのためハゲになるコアラが激増している。このため、当局はコアラを抱くのを禁止することを検討(けんとう)している、というものでした。これには後日談があり、これを聞いた動物園側や観光業者が、その案に反対しているというのです。理由は、ストレスと言うほどのものはなく、ハゲもあまりないというものですが、本当の所は、観光客(特に日本からの)が激減し、観光収入が減ってしまう−ということなのでしょう。日本でも似たようなことがありますが、本当にそのような規則ができてしまいそうなのが、この国です。
 
 話が前後しますが、コアラを見に行く途上のバスの中で、ガイド兼運転手の日本人青年が、こう言いました。「
みなさん、バスの中ではビールはもちろん、水、ジュース類は、いっさい飲んではいけません。」 不思議な話だと思ってよく聞くと、以前にバスの乗客が、ビールを飲んで酔っぱらい、運転手に瓶を投げつけ、それを避けようとした運転手が、運転を過って交通事故を起こしました。その結果、死傷者まで出ました。そのため、当局は「今後、バスの中では、いっさい飲み物は禁止する。」と決めてしまったのというのです。
 
 これを聞いて、私は「日本だったらどうなるだろう。」と考えました。まず、マスコミが、「酔っぱらい、運転手からかい、死傷者」ぐらいの見出しで扱い、読者も「バカなやつがいるもんだ。」で話題になって終わり−というパターンでしょうが、この国では、「自主的に守れないなら、規則を作る。」とでもいうのでしょうか。これについて、議論はいろいろありましょうが、すぐにまじめに対応する姿勢は、すごいと思います。と同時に
一人ひとりの行動が、ルールを作ってゆくという民主主義のやり方が見えるようです。歴史の若いこの国らしいと思います。
 
 実は、この話には後があります。その日は、あまりに暑い日だったので、私は、コアラを見た後、うっかりバスの中でミネラルウォーターを一口飲んでしまいました。その結果、「
水は飲まないでください!」と叱られてしまいました。