・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ 終わりに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
 ここまで書いてきたように、たった6日間でこの国の自然、その古い歴史のすばらしさだけでなく、陳腐でありふれた表現だが「戦争の残酷さ」、そしてこの国の人々の「微笑」も教えてもらった。人々の信仰心の篤さにも触れられた。本文中には書かなかったが、アユタヤでは郊外の「日本人町」跡にも行った。ここは現在すっかり整備されて公園のようになり、在タイ国の日本人会(泰日協会)が管理しているようだった。ここには、日本人のあらゆる年齢層が見学にきていた。私が小さい頃読んだ歴史漫画では、山田長政がタイの王に登用されて地方長官にまでなり、大活躍したことになっていた。「朱印船貿易」の時代は東南アジア各地に「日本人町」ができ、盛んに貿易もしただろう。確かに町跡はゆったり流れるチャオプラヤのそばにあり、かなりの大船でも接岸が可能である。


   「アユタヤ日本人町」(Wikipedia)


 



「日本人町」跡より見るチャオプラヤ川(筆者写)
 ここは昭和の初期までは、荒れ果てた場所であったようだ。それが昭和になって、場所が特定され発掘されたらしい。日本人町は、イギリス人町やオランダ人町と並んで、城郭外の川沿いにあるひとつの「外国人居留地」に過ぎなかった。現に私はアユタヤの国立博物館職員(学芸員ではない)数名に聞いてみたが、誰も「日本人町」のことは知らなかった。むかし、日本人がいたことも知らないと言う。学校で習ったこともないらしい。それが日本では、<日本人町だけがあって日本人だけが活躍した>ようになっている。

 なぜ何百年もほっておかれた所を、発掘するようになったのか。発掘そのものは、歴史的に意味のあることではあるが、それはちょうど日本の海外進出の時期、拡張政策の時期と合うのではないか。こうして山田長政が美化されてイメージができたのではないか。後に日本はこの国の一部勢力と結び、
「大東亜共栄圏」を完成させようとした。歴史そのものを、為政者や軍人が愚弄したということであろう。歴史は常に表と裏の両面から見なければならない。何故か、まわりの他の外国人町跡は、今も荒れ地のままである。
 
 今回わたしは、カンチャナブリで多くのことを教えてもらった。それにしても、日本人のうち何人が、日本軍がアジアでしたことを十分に理解しているのであろうか。中国には、
「万人坑」があり、中国の労働者が日本軍(人)に捨てられ埋められた。これは本田勝一氏の「中国の旅」(朝日新聞社)に詳しくかかれている。その存在は早くから知られていたが、いま多くの日本人が訪れているという話も聞かない。ドイツは戦後、一貫してナチの傷跡を修復してゆき、ユダヤ人たちにも補償を済ませたそうだ。過去の過ちを直視し反省してこそ、未来が開ける。日本の若い人に聞くと、まず映画「戦場にかける橋」も「泰緬鉄道」も知らないことが多い。彼らの年齢からいっても、無理のないことである。現在では、学校の歴史の時間でもほとんど触れることのない事柄だけに、歴史の「風化」が心配である。                            

                                                   (おわり )
お参りは人々の日課
「仏教の国」
 ワット・チャナソンクラムにて
(筆者写)

 

参考および引用資料 References
図書・辞典・地図
・Bankok's Map for Travel and Shopping    現地出版元不明
・地球の歩き方 12 やすらかなる国 タイ      ダイアモンド社
・地球の歩き方 旅マニュアル270 タイ 個人旅行マニュアル  ダイアモンド社
・旅に出たくなる地図 世界編      帝国書院
・写真図説 日本の侵略 アジア民衆法廷準備会編   大月書店  
・日本全史 Japan Chronik    講談社
・中国の旅        本田勝一   朝日新聞社
・現地発行の各パンフレット、資料
LD 
 ソニー・ピクチャーズ・エンターテイメント 「戦場にかける橋」 デヴィッド=リーン監督 PILF7248 1957年 
 コロンビア映画
利用・転載したホームページサイト 
  
 利用させていただいた各サイトにはお礼申し上げます Special thanks to these Home-page sites:
露天屋台 http://village.infoweb.ne.jp/~akira/thai.html
朝夕の大渋滞 http://village.infoweb.ne.jp/~akira/thai.html      
名物タクシートゥクトゥクhttp://village.infoweb.ne.jp/~akira/thai.htm 
車外の風景 http://village.infoweb.ne.jp/~akira/thai.htmlより
JEATH博物館正門http://village.infoweb.ne.jp/%7Efwhw9154/chiangmai.htm
Seiker氏HP http://www.beverevivis.com/books/lestweforget/slide4.htmより
ワットアルンとチャオプラヤ川http://www.anthroarcheart.org/tbla6.htmより
Amazing Thailand http://village.infoweb.ne.jp/~akira/thai.html
Lest We Forget http://www.beverevivis.com/books/lestweforget/
Asiaco Search Engine http://members.nbci.com/granot1/provinces.htm
No Way Back http://angelstation.com/swillner/NoWayBack.htm
Tourism Authority of Thailand http://www.tat.or.th/
In Hell There Is A Place Called Death's Railway http://angelstation.com/swillner/他  
                    
                                   上のサイト中のスケッチから 橋の建設風景






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微笑の国に旅して
2000年10月6日  脱稿
2000年12月  HP用Ver.1
2001年3月30日HP用Ver.2
2001年12月5日HP用Ver.3

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by Kenji Kakehi