1 ラヴェンダー讃歌(A Hymn to Lavenders)

 
わたしの「ラヴェンダー=ハーブ」との出会いは、もう29年ほど前になろうか、南フランスのアルル(Arles,France)であった。街の郊外にあるラヴェンダー畑は、まだ冬のさなかでもちろん花ひとつなく、むしろ荒涼とした感じさえあった。街中のローマ遺跡、コロセウムのそばの日溜まりに、露天行商の若者が所在なさそうにいた。周りに観光客は誰もいない。彼は、ラヴェンダーのエクストラクト(濃縮液)だけを売っていた。その小さな瓶の中に、得も言われぬ香りがいっぱい詰まっていた。この香りには参った。この日からわたしは、ラヴェンダーの「ファン」になったのであった。

 だからわたしのミニ・ハーブ園では、ラヴェンダーがいちばん多い。どこのハーブ園やハーブショップへ行っても、まず持ってない種類はないかと探しまくる。色も一般的な紫から、ピンク、黄色、白色など、花の形も大きさもたくさんある。香りも微妙に異なる。ラヴェンダーでもそれぞれ個性があるのだ。本によると、一千種以上あるそうだが・・・・。もちろん、うちにはその十分の一もない。だが、わたしが愛する種を中心に植えてあるので、一応満足している。残念なことに、昨夏の「炎暑」で、イギリスで手に入れた好きだったものが、枯れてしまった。また探さねばならない。まるで恋人を捜し当てるような作業である。
うちのラヴェンダーたち
( 2001/5)
ストエカス系の変種 もっともスタンダードな
イングリシュ系
                                      (写真・中右とも「Lavender,the grower's guide」より転載) 
 
 ラヴェンダーの花の色ほど、上品なものはない。まず「原色」がない。すべてが淡い色である。中国、日本あたりでは蓮や牡丹、シャクヤクあたりが「高貴・上品」とされるが、色自体はラヴェンダーの色の淡さ、グラデーションは、絶品である。欠点は、一輪だとまったく冴えないということである。あくまで「マス」で見るものである。香りは言うまでもない。人類が千年以上も使ってきて、現代では「アロマ・セラピー(テラピー)」に使われること自体が、その有用性を示している。人間それぞれ好き嫌いがあるが、あの香りが嫌いと言う人には、めったにお目にかかることはないと思う。あれを嗅いだときの、神経の落ち着きはいったい何だろうか。本当に人に優しい植物である。

 
 このように、我が家のハーブの中でやや特別扱いなので、他のハーブが嫉妬しないかと心配している。さて今、寒くなってこれが苦手な種類のラヴェンダーは、今我が家の「ミニ温室」にいる。他のほとんどの仲間が寒風にさらされているのに・・。そして当然「温室組」は、本当に生き生きとしている。もう蕾をつけたのもいる。大事にされている分、ラヴェンダー仲間を代表して、春までしばらく頑張って貰うことにする。(この項、冬のもの) 

 
 今は春の真っ盛り、長い冬に耐えたハーブたちは、暖かいいや、ややあつい日差しの中でのびのびと、またひと雨ごとにすくすくと成長している。その中でラヴェンダーはまず、ストエカスの仲間を中心に花開き、ついで他の種も蕾をふくらませている。地中海原産の彼らは、湿度の高い日本の気候に合わせながら、懸命に花を咲かせようとしているのだ。触れるたびにかすかに匂うその香りはなにか奥ゆかしい。激しく自己主張する三種のジャスミンたちやハニーサクルなどとは何か違うものがある。そういう彼らが私は好きだ。

ラヴェンダーの種類は、大別してスパイカ系・ストエカス系・ラバンジン系・プテロストエカス系と4種あるという

うちのラヴェンダーたち
My Lavenders in my garden (April,May,June 2002)(July 2003)


アルバ(ラバンジン系) マーシュウッド(ストエカス系)

イエロー(ストエカス系)The one I love best スイート(スパイカ系)
シルヴァーレース(プテロストエカス系)
ストエカス系白・紫
?(ストエカス系)




ロドン・ピンク(ラバンジン系)+bee スーパーセビリアンブルー
(ラバンジン系)
 私が訪問した英国のラヴェンダー園 
Herb gardens overseas I visited

英国
ノーフォーク
・ラヴェンダー
 (2000/10)

英王室御用達

Norfolk Lavender, Norfolk, England
英国
アイデン・クロフト
ハーブズ

(2000/10)

Idencroft Herbs, Kent, England

筆者とOwner:
Ms.R.Titterington(Centre)

アイデン・クロフトハーブズIden croft herbs (Japanese version )