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三十八話 中高年ばかりのイタリアのスキー場


 写真は北イタリアのアルプスにあるコルティナ・ダンペッツォのスキー場である ここはヨーロッパでも有数の高級レゾートといわれる その規模は日本の普通のスキー場が100くらい集まっても、この地域のスキー場には歯が立たない さらに山も2000-3000m級でしかも形がユニークで見飽きない そういう素晴らしい場所であるが、もっと日本と違うことがある

 スキー場の客の大半は中高年であり、引退したような老夫婦が多い 女性の中にはなんと毛皮を着て滑っている者さえいる 日本やカナダに圧倒的に多い若いフリーター・学生風のスノー・ボーダーの姿はごくごく希である おかげで私のようなスキーヤーは全くストレスなく滑ることが出来る またコースの割に人が少ないので、怖い思いをすることがない

 さて、写真の説明になる ここはスキー場の中の山小屋風レストランである 食べている人は案の定、中高年ばかりである しかもワインをゆっくり飲みながら大きな皿をのんびり平らげている 食べた後もデザートをとり、コーヒーなどをゆっくり飲む その後もそのままおしゃべりするか、雄大な景色を観賞している 近くに置いてあるデッキチェアで昼寝する中高年も多くいる

 私たちのように日本からスキーツアーで来た者たちは、食事が済むと急いで滑り始めるが、彼らのペースはまるで違うのである まるで今まで急ぎながら働いてきた分を取り戻すかのようにのんびりのんびりしているのだ これが日本の退職者ならどうだろう? きっと一日中何もしないでじっとしているのが苦手ではないだろうか?または夫婦でゆっくりワインを飲みながら、お話するのが出来ないかも知れない

 「日本人の年収はアメリカを追い越した」といわれたのはずっと以前のことだ だから日本人の生活は「世界レベル」かと言われると、どうも疑問だ 私もアメリカのリタイアした老夫婦やオーストラリアの退職者の家に「ホームステイ」したことがあるが、庭や家の大きさがまったく違う ドイツの中流家庭の庭には当たり前にキャンピングカーが置いてあった 夏は犬まで連れて地中海まで家族で行くのだそうだ フランス人の「ヴァカンス」は一ヶ月以上あるという オランダ人は倹約で有名だが、家族の絆はたいへん強固である

 物の量とか外見だけ先進国をまねても、日本は先進国にはなれない もっと心のあり方や家族のあり方や生活の質や老後のあり方を考えてゆかないといけないのではないだろうか もうそういう時期に来ている

内部リンク:
2007/ドロミテ渓谷・コルティナダンペッツォ/CortinaDampezzo2007
2007/ドロミテ・スーパースキー2007DolomiteSuperski(1)

2007/ドロミテ・「セラロンダ」2007DolomiteSuperski(2)


2007年2月9日付のマイブログ「このたびのたび」より転載)

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三十九話 機上での時間の使い方

機上から見るサンセット

 こんな便利な世の中になった今、飛行機に一度も乗ってない方は少なくなったのではないだろうか 「旅行、旅で飛行機の中は無駄な時間だ」と仰る方も多いが、実は「機内の時間は使いよう」なのだ 

 国際線で時間はたっぷりある 特に北米、ヨーロッパ路線では8時間から14時間くらいはある それが南米とかアフリカにもなれば、乗り継ぎを含めると一日では着かないことがある 「旅が大好き」でない方はこの時間が億劫なのだそうだ

取りあえず私のことはさしおいて、周りを見るとこういう感じである

・同行者がいる場合はその相手と何かの話題で喋り続けている 特に女性に多い

・ツアーの場合は何人かで盛り上がり、大声で話し続ける

・普通は一人旅の場合、「愛読書」を出してずっと読み続ける 旅慣れた人に多い

・水平飛行になったら、コンピューターを出して仕事?を始める ビジネスマン風の人に多い

・食事が来るとデジカメで写真を撮ったり、ときどき回ってくる飲み物を頻繁に頼む 飛行機旅や海外が初めての人に多い

・最近は前の席の背にパーソナル・液晶テレビが付くことが多い そのチャンネルを切り替えて感心したり遊ぶ これは飛行機経験の少ない人に多い

・どのエアラインでも機内誌が常備されるが、それを丹念に読んでいる 日本のエアライン以外は英語表記なので、少しは英語が出来る人に多い

・食事が済むと、さっそく「機内販売・インフライトショップ」のカタログで「買い物情報」調べに熱中する 品数は少ないが意外と値段が安かったりするから、相場調べや帰りに買う算段をする これは少々旅慣れた人に多い 旅の初心者は空港のデューティーフリーで買うものだ

・窓側の席の人は景色を見たり写真を撮る 初心者か写真が好きな方だ

・飛行機のヘッドフォーンには手もつけず、自分のCDプレーヤーやMP3を聞き続ける人 旅慣れたかこだわりを持ったマイペースの人である

・トイレに立った時、後ろのギャレーでCAに話しかけるか、ストレッチをする物 一人旅で旅慣れて好奇心が強い者

・財布などを取り出し金を出したり、計算したり、メモをこまめに取る これは日頃でも几帳面な方で、旅の回数は関係ないことが多い

・タダ酒をたくさん飲んでひたすら寝る人 どんな方だろうか?

・これから観光する国、町の観光書、ガイドブックを出して読んで、情報を頭に入れている人 仕事を直前までしていたか、「泥縄」の人であろうか


まだまだあると思えるが、お読みになっていらっしゃる方はどにタイプであろうか?
「えっ?あっ、私ですか?それはHPの方をご覧になってご判断下さい(笑)」

 内部リンク:旅の目的いろいろ?

2007年2月24日付のマイブログ「このたびのたび」より転載)

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四十話 「金儲け」に執心でない「町並み保存指定」・陣屋町・岡山市足守



 日本には数えきれないほどの「城下町」がある 正確に言えば、江戸末期で約300弱の大名がいただろうから、その数に近い「城下町」があったはずだ そして大名でも「城」持ちの大名と館に近い「陣屋」持ちの大名があるから、規模もピンキリだ その内でもピンは国宝姫路城の城下で、キリは小さな田舎の町であろう

 そういうキリのひとつがおそらく岡山市のはずれにある「足守」地区であろうか というのは町の人口が現在8000人だけでなく、今まで観光的には「全国区」ではなかったからだ 地元岡山でこそ名前はまあまあ知られていて、中高年を中心に静かなブームを保持しているが、他県の方にはあまり知られていない

 ところがこの小さな田舎の町出身者がそこそこ「ビッグ」なのである もちろん現代の話ではなく、歴史上の話である まず一人が歴史の教科書にも出てくる
緒方洪庵である 幕末の蘭学者、医学者で大阪で「適塾」を起こし、福沢諭吉、大村益次郎などの有名人を育てた あの漫画家手塚治虫(医師免状保持)の曾祖父もここの門人だったそうである その塾が学校になり、後の大阪大学医学部に発展した だから建物や資料はそこに現存する

 もう一人が明治期の大歌人
木下利玄である 最後の藩主の弟の第二子として生まれ、のち宗家の家督を継いだ 今流に言うと「殿様になった」のである 明治の身分は子爵、それで上京して学習院初等科、のち東京帝大文科に入学した 佐佐木信綱に師事して短歌を学ぶが、逸材として認められた 武者小路実篤や志賀直哉とともに「白樺」を創刊した・・・

 田舎の小さな町で、この二人だけでも逸材といえるが、遡ればこの足守藩は実は
秀吉正室北政所の実兄木下家定の藩なのである だから現在でも豊臣家ゆかりの品々も「足守文庫」((資料館)に現存している

 足守はこういう「陣屋城下町」であるが、訪れると意外と「俗化」していない もちろん既述のように「メジャーではなかった」のも大きな理由だが、町中の展示物の建物がほとんど「入館無料」なのである パンフレットだけは50円だったりするが、基本的にはタダなのである そして駐車場もすべて無料!である 目抜き通り周辺にも「観光客相手」の店・・土産物店やレストラン、喫茶店、ファーストフッドの店が見えない

 もちろん「客が少なくて商売にならない」のも一因だろうが、町の人にも「積極的に儲けよう」という姿勢が見えないような気がする あるご婦人に訊いたらこう仰った 「もちろん儲けようという人も居るにはいますが、そこまでして金儲けしなくてもねえ・・」 町の人はそういう姿勢にはやや冷淡な反応を見せるらしい 「あの倉敷みたいになりたくないのですよ」 「あの倉敷・・」とは「チボリ公園」であり「倉敷美観地区」のことである そして心の奥には「ここは元・武家の町、天領で商人の町・倉敷とは違う」という意識があるのである 一種のプライドなのかもしれない

 もうひとつの理由はこれである 建物・施設のかなりが岡山市の所有であったり教育委員会の管轄なのである だから「シャカリキに」金を儲けなくてもよいのだ もちろんそれは「県民の税金を使う」ことになるのだが、そういう金の使い方に異論がある方は少ないのでないだろうか それは結果的に県民の「文化的・歴史的財産を保持する」ことになるからである

 さらにもうひとつ大切なことがある それはこの町を愛する人たちのグループが存在し、ボランティアで施設の一部を維持運営し、荒れ果てた木下利玄の生家修復運動を推進し、募金活動をやっていることだ 「自分の町は自分で守る」のである 

 ゴミがほとんど落ちていないこの町には、「ゴミ拾い専門員」がいる訳ではないらしい 別のご婦人はこう言われた 「ゴミが落ちていたら道路際の家人が拾います そのままだとそこに観光客のゴミが集中しますから・・」 「私が捨てたゴミではないから私は拾わない」のではなく、すぐに掃除するのである それは「郷土愛」がなければできないことである 

 そしてこの町は「大きすぎない町」であるからお互いの顔を知っているし、下校時の小学生にも声をかけている 四季の花が咲き、小学校のそばに歴史的建造物があり、歌人木下利玄の生家が窓から見えるこの「大きすぎない学校」からは明るい遊び声が近隣に響く こういう町がもっと日本にあっても良いであろう

当ページの記事関連写真:
 木下氏陣屋町の足守2007(岡山県)   陣屋町・足守の春2009(岡山県)

2007年3月3日付のマイブログ「このたびのたび」より転載)

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四十一話 


 

2007年2月9日付のマイブログ「このたびのたび」より転載)

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四十二話 


 

2007年2月9日付のマイブログ「このたびのたび」より転載)

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