本場のカルビグイを喰いに
一日中歩き回ったせいか、夕食の時間が近づくと、ずいぶん空腹を覚えてきた。せっかくの本場韓国なので、焼き肉は是非と思って、この国にきた。さいわい、本によると、この国際市場に「釜山カルビ」という日本人に評判の焼き肉屋があるらしい。地図を頼りに探して歩くと、意外に早く見つかった。2階建ての大きな店でガラスや壁の全面にハングルがいっぱい書かれている。すべて、リーズナブルな値段である。
店内に入ると、あの香ばしいタレと牛肉の焼けた香りが、漂っている。案内されるままに靴を脱ぎ、二階に上がると、おネエさんがメニューを持ってくる。「日本語のメニューありますか」というと、あった。早速カルビを注文した。辺りの様子は、日本と同じだが、やたら広くて、韓国語の会話や笑い声が、聞こえてくるところはもちろん、女性が立て膝するところが異なる。おネエさんは引き返してきて、水と頼んだビールを置き、箸をおいた。何と金(かね)のま四角い長い箸であった。一瞬、「仏さん」になった気分がした。彼女が、次に来たときは、野菜の入ったいろんなキムチの小皿を並べた。これらは、注文しないでもついてくるらしいが、ごはんは別注文である。日本語はよく通じる。この店には、日本人の常連が多いのだろう。
驚いたことに、最後に来たカルビは大きな肉片で、それを客の目の前でハサミで、リズミカルにチョキンチョキンと切ってゆく。そういえば、さっきのキムチも切っていたようだ。後の話だが、翌日の昼食で食べた唐辛子で、汁が真っ赤な辛い「ハンフン冷麺」も椀(わん)を置いたあと、麺を持ち上げて切っていた。日本の食べ物屋では、こういうことはしない。日本だと客に失礼な感じがするが、これも「文化の違い」だということが、よく分かる。逆に、我々日本人が、外国で、日本で当たり前のことをしていても、「失礼」になることはあるのだろう。要は「郷に入りては郷に従え」ということか。