ソウルで日本人によく知られているものの一つに「ロッテワールド」がある。アメリカや日本の「ディズニーランド」には歯が立たないらしいが、行った人はまずはほめる。その「ロッテワールド」のミニ版が、このプサンにもあるというので、行ってみることにした。もともと人工の遊戯施設が好きではない筆者は、東京ディズニーランドはもとより、地元の倉敷・チボリ公園にさえ入ったことがない。それが急に行く気になったのは、当地の
地下鉄に乗りたくなったからだ。
地下鉄は大都会にしかなく、景色も見えないし、騒音が結構うるさくて、あがりおりも大変な代物である。それが何となく好きになったのは、ボストンとパリのそれに乗ってからである。ボストンのは、車体も施設もいかにも歴史を感じさせる古いものであったが、エスカレーターが木でできており、人間味があり大都会とは思えない雰囲気と市民の愛着が気に入ったからであった。また、パリのそれは、アクセスの長い地下道にパントマイムの芸人やコインの入ったバイオリンケースを開いて、聴衆がいなくても演奏している苦学生がいることや、電ヤがゴムのタイヤを履き静かに走ること、さらにこの大都会を最も安く最も速く移動できることが、気に入ったからであった。それ以来、国内外を問わず、訪問した街では、一度は乗ることにしているのである。
こうして地下鉄1号線に乗った。設備は新しく電車もきれいだったが、車内のようすは、東京のそれと変わらず、取り立てて書くこともなかった。しかし、驚いたのは料金の安さであった。少し長めの2区間に乗ったが、料金はたったの500ウォン(日本円換算で約50円)であった。外国では、概してバス電車など公共輸送機関は、料金が安く設定されているが、日本は通常その二倍以上で、これより高いのはスイスアルプスのユング・フラウ・ヨッホ登山電車くらいである。いずれにしても「庶民の足」は安いに越したことはない。「安い」と言えば、タクシーも安い。基本料金プラスくらいで乗っても、日本円200円で充分お釣りが来る。冷麺が600円ぐらいと考えると、タクシーは安い。そして、タクシーの運転者は中年の人が多いが、日本語が上手な人が多く、日本人観光客としては助かることが多いのだ。
「ロッテワールド」は、ロッテデパートの9‐11階にあった。正しい名は、「ロッテワールドスカイプラザ」という。日本の野球のロッテ球団やロッテ製菓、ロッテリアは同系列で、韓国資本である。入場料を払って入ると、吹き抜けの屋根つきドームのような場所に出る。正面にディズニーランドのお城様のものがあり、中央が舞台で、まわりにいろいろな部屋がある。展示や内容は、大人もそれなりに楽しめるが、幼稚園児から小学生までぐらいが対象の施設であろう。特に驚くような「レジャーランド」ではなく、普通の「遊園地」である。本家ソウルのはもっと規模は大きいと思うが、正直言って、ここは期待はずれであった。